【Q】七種泰史
小川航司さんからの質問です。
「文字を創ることは好きですか、嫌いですか。
その理由もあればお願いします」

【A】棚瀬伸司
考えることは好きですが、なかなかフィニッシュまで辿り着けません。鉛筆の下書きだけで止まっているフォントがいくつかあります。とは言っても、それらはもちろんシングルバイトのカナとアルファベットです。なにしろ根気がないので、今回の1,000文字は自分にとって非常につらいものでした。

【A】山田正彦
ふだん仕事でロゴタイプなどを作っているときは100%好きですが、FONT1000をやってみて労力の面では好きの度合いがかなり下がったときもありました。好きじゃなきゃやれないよ、と言いたいところですが「好きこそ物の上手なれ」にあやかりたいものです。

【A】篠原榮太
文字デザインをすることは、肉体的苦痛が伴う場合がありますが、それは、デザインが嫌いとかいう事と違います。むしろ長時間かかって制作完了したときの達成感が心地良いものです。
 タイプフェイスデザインの種類によりますが、私の個人的体験ですと、一書体(本文用)約7.000字(第2水準)を手掛けたときは、もちろん10数年前ですからコンピュータはありません。別な仕事を同時に進めながら全部手書きで、毎日5cmの枠にむかって、約2年間のロードレースです(書体によっては2年間ではとても出来ません)。3,000字位にさしかかって、最初の頃の文字を確認すると、多くの部分で違いが判り、最初からまた書き直しです。スタート時点では、属性データをもとにコンセプトを充分たてたつもりが、この時点でタイプフェイスデザインの難しさを改めて知らされます。マラソンでいうと30kmあたりの状況と似ているかも知れませんが、棄権するわけにはいきません。このことをある人に言ったら、マラソンではなく、トライアスロンだと言われました。そして、まがりなりにもこの書体が一般に発売されはじめると、またしても反省しきり、頭をかかえる連日でした。NEXT ONE と言い訳を自分に言い聞かせながらの日々が続きます。
 怒涛のごとく仕事をしたい! そしてある時は春風のように爽やかな生活を送りたい…というのが私のキザな日常です。

【A】神田友美
好きです。これからも続けていきたいです。

【A】長谷川眞策
同じイメージを持続しながらの制作は、けっこうつらいものがあります。他の仕事を合間に入れるとリズムが狂うようです。地道で大変な制作活動と思うので書体だけで飯を食っている人はすごいなと思います。自分では嫌いなのか? 好きなのか? わからん。でも、「こんな書体があったらいいな!」と思えば、苦も楽ですよ。
 今回の「KANJI EDIT KIT」でスクロールして、自分のパソコンで自分の作った書体が印字できた時に感動しない人はいないでしょう。文字に興味のある方はぜひFONT1000に参加してください。

【A】奥村昭夫
文字を創ると言うよりデザインの仕事が好きです。文字はこれから創る予感がします。

【A】七種泰史
私の住んでいるところから30秒足らずのところに、30歳くらいの旦那さまと奥様と2人でやっているフランス風家庭料理のお店があります。気取らず、おごらず、ここちよさを感じさせてくれるこのお店は10人ぐらいの席数しかない小さいお店です。
 このお店のメニューが奥様の手書きで、その文字が以前からずっと気になっていて、つい最近もらってきました。柔らかく、暖かく、優しさを感じさせるその文字に惚れ込みました。素敵な文字に出会えるとうれしいですね。やっぱり私は文字が好きです。
 これでまたひとつ、タイプフェィスを創ってみようと思っています。

【A】池上貴文
好きだと勘違いしていたようです。そんな甘いもんじゃありませんでした。

【A】和田庸伸
『好きです』というのも現在、街の色々なお店に行きどんなものを見ても文字を意識してしまいます。素敵な字に出会うと背中がくすぐったくドキドキします。僕の中で『今』作りたいと思うものが文字なんです。文字はシンプルでかつ深いビジュアル表現であると思います。デザインと言われるもののなかに色んな表現がありますが僕はやっぱりシンプルにスコッっとはいってくる文字というジャンルは僕の中ではとても興味深く放っとけないところにいます。
 というわけで僕は文字を創ることはきっと自分ではよくわかりませんが『好き』なんじゃないかなーって思います。

【A】土屋淳
好きです。でも嫌いなところも同等にあります。文字は、文化、歴史の塊です。文字を創ることはその塊に触れているような気がします。古代の化石発掘作業にも似た、辛いけどワクワクする感覚です。ただ、こらえ性がないため、ギブアップしたくなる気分での作業は地獄です。